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セレン欠乏症セレン欠乏症は、セレン(selenium)と呼ばれる微量元素の不足によって引き起こされる健康問題を指します。セレンは体内での酵素の構成要素として重要であり、生体内での酸化還元反応や甲状腺ホルモンの代謝に関与しています。セレン欠乏症は主に食事からのセレン不足が原因で発生し、動物や人間にさまざまな影響を与えます。
1.セレンの機能:
●抗酸化作用:
セレンはグルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素の一部であり、細胞内の酸化ストレスから細胞を守る抗酸化作用があります。
●甲状腺ホルモン代謝:
セレンはモノデイヨードチロニン 5'-デイヨダーゼ(DIO1)やセレノプロテインP(SePP)を通じて、甲状腺ホルモンの代謝に関与しています。
●免疫機能:
セレンは免疫系の正常な機能にも関与しており、T細胞やB細胞の活性化、抗体の産生などに影響を与えます。
●生殖機能:
セレンは精子の発生や卵子の成熟にも関与しており、生殖機能に影響を及ぼします。
2.セレン欠乏症の症状:
●クシング症候群:
セレン欠乏症により、骨や関節が腫れ、歩行が困難になる「クシング症候群」が発生することがあります。
●心臓病:
セレンは心臓の健康にも関与しており、欠乏症が進行すると心筋組織に変化が生じ、心臓病のリスクが増加します。
●筋肉の弱点:
セレン欠乏症により筋肉の弱点が生じ、運動能力が低下することがあります。
●低い免疫機能:
セレンは免疫機能に関与しているため、欠乏症が免疫機能の低下につながり、感染症への抵抗力が低下します。
●不妊症:
生殖機能にも影響を及ぼすため、セレン欠乏症は不妊症の原因となることがあります。
●甲状腺機能低下:
セレンは甲状腺ホルモンの代謝に関与しているため、欠乏症が進行すると甲状腺機能が低下し、甲状腺疾患のリスクが高まります。
3.セレン欠乏症の原因:
●食事の不足:
セレンは一部の食品にしか含まれておらず、特に土壌のセレン含有量が少ない地域ではセレン欠乏が発生しやすくなります。
●吸収不良:
腸管でのセレンの吸収が不足する場合、セレン欠乏が生じる可能性があります。
●慢性疾患:
慢性疾患や特定の医療状態もセレン欠乏を引き起こす可能性があります。
4.セレン欠乏症の予防と治療:
●バランスの取れた食事:
セレンを豊富に含む食品を摂取することが重要です。ブラジルナッツ、魚、卵、穀物などがセレンの良い摂取源です。
●サプリメント:
セレン欠乏が慢性的である場合、サプリメントを検討することがあります。ただし、過剰摂取も問題となるため、医師の指導が必要です。
●医療管理:
セレン欠乏による症状が進行している場合、医師の指導のもとで治療が行われるべきです。症状によっては他の疾患との併存がある可能性も考慮されます。
●セレン欠乏症と動物:
セレン欠乏症は動物にも影響を与えます。例えば、家畜や家禽においてセレン欠乏が生じると、白筋症(白斑症)や白鶏症などの疾患が発生しやすくなります。これらの症状は骨格や筋肉の発育不良、心臓病、不妊などが含まれます。家畜の飼料や餌にセレンを適切に添加することが、動物の健康を維持する上で重要です。
セレンは体内の酵素や代謝において必要不可欠な微量元素であり、その不足は様々な健康問題を引き起こす可能性があります。バランスの取れた食事や、必要に応じてサプリメントの摂取は、セレン欠乏症を予防するために重要です。